アメ車、デフオーバーホール、4WD、グランドワゴア
2024年12月12日更新
グランドワゴニア、いいですよね。
今も作業中なんですが、デファレンシャルのリビルドが物凄く
難しくて後ろのデフをリビルドするだけで1か月近く掛かってしまいました。
スタンダードアクスル(デファレンシャル)なら、メジャーリング工具も
作ってあるし数えきれない程リビルドをしているので問題はないのですが
グランドワゴニアのリヤーアクスルはDANA44トラックロックと呼ばれ
一般的にはリミテッドスリップデファレンシャル(LSD)なんです。
LSDにも何種類かあって、クラッチ板を返してロッキングするタイプと
メカニカルロッキングがあります。
グランドワゴニアのはクラッチ板のタイプになります。
何が大変かと言うと、ロッキング部分を組みてる時が大変なんですよ。
すごい強いスプリングで押さえてあったり、スプリング代わりにに
プレートを使っていてこのスプリングを押さえ込むのは力ずくではできません。
それぞれスペシャルツールがありこれを使わないと組めないのです。
インスタグラムにその時の様子をアップしています。
DANA44トラックロックはかなり前のアクスルシステムなのでスペシャル
ツーツなんて中古でも売ってないし、サービスマニュアルや動画を頼りに
現物合わせでプロトタイプを製作していくのです。
ロッキング部分の交換をクリアしたら次はドライブピニオンギヤー
のディプス測定が待っているのです。
プロペラシャフトと繋がっていて回るギヤーをドライブピニオンギヤーと呼びます
ドライブピニオンで回されるギヤーをリングギヤーと呼びます。
ドライブピニオンギヤーディプスとは、ドライブピニオンギヤーをデファレンシャル
ケースに組み込んだ時のドライブピニオンギヤーの底の部分からリングギヤー
の中心までの距離の事です。
ディプスは車種やデファレンシャルにより違いますからサービスマニュアル
を参考にするか現車で測定するようにします。
ここで重要なポイント
デフやその他ユニットを修理またはリビルド、オーバーホール
をする時、症状や原因を見ないでいきなり分解しがちですが
それでは直る物も直りません。
僕は、エンジンやミッション、デフと言った色々なユニットパーツを
リビルドしています、例えばミッションが滑るんだ、なら降ろして
リビルドだね、ではなくて滑りの症状を体験しオンビーグルで点検
を繰り返して作業内容を組み立てるようにしています。
これからお話するデフの作業方法を読めばオンビーグルでの症状体験、
測定、点検がどれだけ重要か分かると思います。
「ディプスは分解前に測定をしておく」
「プレロードも分解前に測定しておく」
「バックラッシュ、フェイスコンタクパターンも見ておく」
が早くリビルドできる秘訣なんですよ。
ディプスが決まったら次はプレロードと言うドライブピニオンだけの
転がり抵抗を調整します。
ディプスとプレロードは同時に行われます。
ディプスは正しくてもプレロードの調整が正しくないとやり直しです
ディプスはシムと呼ばれる薄い板を足したり引いたりして適正値に持って
いきます。
プレロードは、シムで調整するタイプでクラッシュスリーブと呼ばれる
筒状の部品の長さを変更しながら調整するタイプがあります。
ディプスもプレロードもベリングを再使用か新品かにより値が変わって
くるので要注意です。
ディプスはリングギヤーとの歯当たり具合に影響します。
プレロードはベアリングの寿命に影響してきます。
ドライブピニオンギヤーのディプスとプレロード値ができたら
次はリングギヤーをケースに付けて、ドライブピニオンギヤーと
リングギヤーのフェイスコンタクトパターン(ギヤーの歯辺り)を点検します。
リングギヤーにギヤーマーキングコンパウンドをリングギヤーの3か所と
120度ごとに塗りドライブピニオンギヤーとリングギヤーの歯辺り具合を点検します。
マーキングコンパウンドは皆さんが良くご存じの光明丹(こうみょうたん)
とは少しだけ違います、光明丹でも用は足りるのっですが、やはりキッチリ
点検するならデファレンシャル専用のコンパンウドの方が良いですね。
コンパウンドを塗布したリングギヤーの歯とドライブピニオンのギヤー
の歯を擦り合わせるようにリングギヤーまたはドライブピニオンギヤー
を回転させます。回転させる時はどちらかのギヤーに負荷を与える必要
があります。
こうして擦り合わせたリングギヤーの面(フェイス)を点検します。
当たり面は次のような箇所があります。
ドライブサイド、コーストサイドそれぞれの当たり面がヒールサイドか
トーサイドか、フェイスかフランクかアンダーカットなのかを点検します。
リングギヤーとドライブピニオンギヤーの当たり面はドライブピニオンギヤー
のディプスに関係しています。歯当たりが適正でない時はディプス調整から
やり直しになります。
歯当たりが適切なら次のバッバックラッシュ点検に移ります。
バックラッシュはリングギヤーとドライブピニオンギヤーの
歯が当たる部分の隙間です、スパイダーギヤーケースの両側に
付くサイドベアリングとデファレンシャルケースの間の両側の
シムを足したり引いたりしながらバックラッシュを求めていきます。
全て整ったらこれで完成ではなく、最後にトータルプレロードを
測定しますよ。
トータルプレロードとは、ドライブピニオンギヤープレーロードと
リングギヤープレロードを足した数値です。
トータルプレロードが適正でない場合は、それぞれのプレロード、ディプス
バックラッシュが正しくないからです。
小さな数値でもそれが足されていけば大きな数値になります。
作業のクオリティーってこのようなところで決まるんじゃ
ないかと思っています。