アメ車、エンジンリビルド手順
2024年6月17日更新
エンジンには個体差があるので点検もせずに
大まかな金額でも見積を出すのは難しい事です。
リビルドを行う時は、エンジンからの異音が聞こえる
時や、そろそろかな?とオーナーが思った時ですよね。
そろそろと思うのは走行数が目安になると思うのですが例えば、30万キロ走行している車が2台あったとします
同じ30万キロでもエンジンがかかっていた時間はそれぞれですよね。
そのような事から分解せずに金額を出してしまう
事は出来ないのです、例えば私が大体70万円くらいだと思いますよと書いたら70と言う数字が頭から離れなく
なりますよね、なので点検をしていない車両の見積もり
は出せないのです。また為替や部品在庫の変動
が激しいので実際にリビルドをする時に分解せずに外部から点検を行い大体の見積もりを出した方が良いと思います。
リビルドには、
ショートブロック
ロングブロック
コンプリートリビルドの3種類があります。
ショートブロックは、
シリンダーヘッドはリビルドをしないシリンダーブロックのみのをリビルドします。
ロングブロックは、
シリンダーヘッドもリビルドを行いインテークマニフォールドを取り付けしてエンジンがスタートする所までは持っていきますが、キャブレターやインジェクションなど入庫時の調子の悪さがエンジンと他の部分であっても他の部分の修理は行いません。
コンプリートリビルドは、
エンジンだけでなく、補機類
例えばウオーターポンプやパワーステアリングポンプ
サーモスタットなどエンジンを車両に載せてから
作動する部品も交換しエンジン始動後のチューンアップも行うリビルドです。
皆さん誤解されている所もありエンジンリビルドに出せば補機類も含めすべてOKな状態で納車だと思いがち
ですか、それは違います。
エンジンリビルドはあくまでもエンジン単体の再構築であって補機類までは含まれていません。
細かく言えば、センサー類やサーモスタット、PCV,EGRなど
エンジンが調子良く作動するには必要不可欠な部品ですがリビルドと言うメカニカル部分の再構築と言う点では
関係のない部品です、これらの部品も含め見積を出さなければいけないのでやはり点検は必要になります。
リビルドに入る前に
入庫した、車両の全体的な点検
- :エンジンをスタートさせ調子を見ます。
打音、異音の原因を点検し予測します。
コンピュター診断機が繋げられる車両はスキャンニングします。
オルタネーターやパワーステアリングポンプ、
エンジンと一緒に回転する補機類の点検
➁:クーリングシステムの点検
水温最高温度の点検とクーリングシステムからの
漏れなどがないか点検をします。
ラジエーターやホース類の点検。
- :エンジンからのオイル漏れ有無の点検。
- :エンジン停止状態で、テスターを使いシリンダー
リークテスト、コンプレッションテス行います。
シリンダーリークテストではピストンリングの摩耗度合、メカニックスコープではシリンダー内の状態を点検します。シリンダーリークテストでは、バルブシステムのシール度合も点検する事ができます。
- :ここまで点検を行えば、大まかな見積を出す事ができます。
リビルド作業
- :エンジンを車体から外します。
- :エンジンの分解を行います。
- :分解した部品を洗浄します。
- :洗浄した部品の目視点検と測定器を使った点検を行います。
- :測定する部品は、
バルブリフター、カムシャフト、カムシャフトベアリングホール、クランクシャフト、クランクシャフトメインベアリングキャップ、コネクティングロッド、コネクティングロッドキャップ、ピストン、シリンダーブロックとシリンダー内部。
- :目視点検する部品は、
タイミングチェーンコンポーネント、ロッカーアーム、
ロッカーアームピボット、ロッカーアームアジャストナットまたはホールドダウンボルト、プッシュロッド。
- :シリンダーヘッドは
EXバルブ、INバルブの状態と測定、バルブシートの状態と測定、バルブガイドの状態と測定を行います。
測定と言いますが、何をどうやって測定して何を決めて
いるのか知りたいですよね。
クランクシャフトは、シャフト自体をシリンダーブロックに
付ける部分(メインジャーナル)と言っていますがこの
ジャーナルの外径を測定しています。
5箇所ジャーナルがあり、1個のジャーナルの5箇所を測定しています。
コネクティングロッドジャーナル(ピストンピンジャーナル)とも言いますが、ここも1か所につき5箇所測定します。
それぞれの同じ測定を3回繰り返し測定します。
測定結果によりシャフト研磨のアンダーサイズを決めたり交換するかを決めています。
測定結果は、
サービスマニュアルの諸元表と照らし合わせます
例えば、クランクシャフトジャーナルの新品時の径は
10だとしましょう、再使用可能な径は9とします。
測定結果が9.5だったしましょう。再使用範囲外まであと0.5ありますから使えるのですが、ここでの使えるのサービスマニュアルの意味は、STDサイズのベアリングを使っても打音は出ないでしょう…。と言う曖昧な解釈になります。ベアリングとジャーナルの隙間は厳しく決められており範囲も狭いのです。クランクシャフトの最小範囲が1ならジャーナルとベアリングの隙間の範囲は0.01程度なのです。
ベアリングとジャーナルの隙間が範囲外でもシャフトが範囲内だから再使用するビルダーもいるようですがそれでは打音は出ないもののエンジンは長持ちしません。
0.5摩耗しているシャフトが範囲外の8.9になるまでどの程度の時間で達するのか予想してみてください。
シリンダーブロックは
シリンダーヘッドとブロックが合わさる面の水平を測定します、シリンダー内部の測定は、ピストンが上下運動を繰り返している上部と真ん中と下部を測定しています。
3か所同じ測定で、1か所に付き4箇所測定しています。1シリンダーに付き12箇所、これが8気筒ですから
96箇所にも及びます、96箇所の測定を3回繰り返し
平均を求めています。
シリンダー内部は真っすぐな円柱ではなく、下部の方が
狭くなるテーパー状になっているので上部と下部の差も
別に測定し差を求めます。これらの測定の結果次第でボーリングするオーバーサイズを決めています。
ボーリングを行えばオーバーサイズのピストンが必要になります、リビルドしているエンジンや車の使用条件に合ったピストンとピストンリングをチョイスします。
と、まぁこんな手順でエンジンリビルドが行われています。
シリンダーヘッドは
バルブスプリングの自由長と過重をかけた時の
長さを測定。ロッカーアームなどは摩耗度合を目視点検。バルブリフターは油圧を保持するかテスターで点検を行うと共にカムシャフトと接する面を目視点検します。
カムシャフトは、カムローブを点検します。
新品の部品はそのまま使わず、すべて測定し使うようにしています。新品と言えどもたまに精度不良や加工が必要になる場合があるからです。